先日、ダイナミックロープかスタティックロープかロープを見ただけで分かるか? と聞かれた。
かたーい外皮に包まれたスタティックだったらちがいが分かるだろうけど、ロープを見た目だけで判断するのは、ちと難しいだろうと答えた。
そこから、セミスタティックとスタティックの話になり、一部なのかもしれないが、アウトドアの業界では、『「スタティックもセミスタティックも似たようなもの」という見方でまぁいいだろう。』 という気風があるような、ないような・・・。
ちがいがはっきり分かっていて、「スタティックがベストだけど、セミスタでもいいか」ていうのなら、いいんですけど・・・。
ところで、本当に「二つは似たようなもの」と一絡げにしてもいいのだろうか。
「スタティック」という言葉の意味は、「静的な」である。
引き合いに「ダイナミック」という言葉を使わせてもらうと、逆に「動的な」という意味になる。
ロープの話だから、生きのいいウナギのように勝手に動くわけでもなく、もちろん静かなロープなんてのもない。
少々乱暴な言い方をしてしまえば、ロープの伸びを重要視して表現している様なのである。(そんなことは百も承知!とは怒らずに・・・、一応、ロープになじみのない人にも分かってもらえるように出来るだけ平易に書いているつもりなので・・・。)
じゃ、「セミスタティック」は?
「セミ」と言うところが肝なんだろうけど、名称が伸びに関わっているわけだから、「スタティックより伸びるよ~、でもダイナミックじゃないよ~」と言っているんだろうと予想できるわけ。
そこに、落とし穴がある気がする。
「スタティックより伸びるけど、基本的には伸びないロープでしょ」てな感じで、セミスタティックを使ってしまう人が多いのではないかな。
実は、私も数年前は、これにかなり近い認識だった。
ロープにはそれぞれ、ロープの種類によって伸び率が決まっている。
例えば、
スタティックロープは6%未満(CI)
セミスタティックは5%未満(EN)
?????
不思議じゃないですか!
伸びないはずのスタティックロープが伸び率6%未満で、やや伸びる程度のはずのセミスタティックが5%未満。???
ヒントは、
スタティックロープは6%未満(CI)
セミスタティックは5%未満(EN)
赤字のCIとENが全てを区別してるんです。 これらは、認証です。
長くなってきたんで、はしょっちゃいますが、要は、判定方法が違うんですね。
CI認証はCordage Instituteの略で、アメリカが判定基準を作っています。 そして、それは、「破断強度の10%の負荷をかけた時にどのくらいロープが伸びるか」と言う事です。
で、一方、EN認証はEuropian Standardの略で、ヨーロッパの基準です。 こちらの判定基準は、「まず、50Kgの荷重をロープにかけて、その後100Kgの荷重をプラスする。その伸び率の差」と言う事です。
という事で、それぞれ、全く違うテストで、伸び率を出しています。
数字だけを見てみると、セミスタティックの方が伸び率が少ないように見えてしまいますが、実は、スタティックの方が格段に伸びません。(ちなみにロープの破断強度って、2000kgとか3000kgとかありますから、10%でも200kgとか300kgの荷重になるんですよ。)
私の体験から・・・。
数年前に、人工壁を下降する場面がありました。 (木登りを常としている私としては、下から上に行ってまた下りるというのが普通で、すぐに上から下りるという場面は、めったになかったんですね。それまで。)
その時に初めてセミスタティックを使ったんですが、その時の自分の認識は、「そんなにロープは伸びないはず。」でした。
しかーし、思いのほか、ビヨ~ンと伸びて、スリップ&転落しそうになりました。
その時は、判定基準が違うなんて知らなかったから、ただ単に伸び率だけを見て使用してましたが、その知識の無さが命取りになる事を身を持って知りました。
なので、これからロープを使ってみようと思っているみなさん。
安易に物まねだけはやめましょうね。
きちんと知識を持った指導者に基本を習ってから行いましょう。
地上から足が離れた時点で、危険と隣り合わせですよ。
もし、「絶対独学!金払ってまで習えるか!」と言う方は、がんばって英文の資料を読んでください。
ちなみに、私が指導しているロープを使った木登りツリーイングのロープは、今回の話題の分類には入りませんので、ご注意くださいね~。
その話は、また別の機会に。